全国ご当地ラーメン食べ歩き(2)長崎ちゃんぽん・リンガーハットと日本の味

 今となっては、笑い話にしかならないだろう。今風の言葉で言えば、「マジ?」「ウソ!!」。

1980年前後、韓国から日本に国際電話をかける時、市内のメイン郵便局に出向き、国際電話・市外電話担当係員を通して、どこかに(特に秘す)申請をしてから、1~2時間電話ボックスの前で待ち続けて、やっと国際電話で我が家族との通話が可能であった。国中で一般電話を持つ家も多くなく、カカオトークもZOOMによるMeetingもない時代であった。

 当然ながら日本の紙媒体の新聞を読む機会もなく、また衛星放送やインターネットを通したドラマやニュースに接することなどは夢の世界であった。その中で、わずかに日本の短波放送は韓国内で鮮明に聞くことができた。そして中波のラジオにしても、昼間は無理であったが、深夜になるとなぜか耳に飛び込んできた。時が時だけに、朴大統領暗殺事件、スリーキム時代のソウルの春、光州事件なども、日本のメディアを通して、いったい何が韓国で起きているのかを把握できた。頼りはラジオであった。

 さて、その不安な政情に悩み、一刻も早く日本に帰りたいと願っていた時に、ラジオから繰り返し聞かされたのが、長崎ちゃんぽんリンガーハットの宣伝であった。ラジオの感度が悪く、いつも雑音が入っていた。いかなる麺食なのかも知らないで、その広告曲を耳にするたびに、日本への望郷の念を募らせていた。

 時が幸い。偶然に九州に職場が見つかり、赴任した当日、上司に特にお願いしてお連れ頂いたのが、長崎ちゃんぽんリンガーハットであった。長年の夢をかなえたかった。その上司は就任祝いの会食であるので、高級なお店を予約なさっていたようだった。だから、「なぜ、リンガーハット?」と怪訝そうに質問なさるのも当然であった。

そのお店で注文したのは、ラジオで耳にしたメニューであった。当時290円であった。

 白濁色のスープに、太麺。これまで私が口にしたことのない麺食であった。未知の長崎というご当地の味、そしてリーガーハットというエキゾチックなネーミングに心を奪われた。

 だからこそ一口食べて、おいしいとかまずいのではなく、やっと日本に帰国できたという安堵感が口いっぱいに広がったことを思い出す。

その後、リンガーハットは全国展開の企業。今やどこでも口にできる国民食。しかし個人的にはあの国道沿いの、屋根に赤いとんがり帽子の煙突があるお店(Hut)で、初めて食べた味を超えるチャンポンはない。

社史を調べると、リンガーハットは1974年創業。会社創立間もなく、しかも長崎から他府県に進出してまもない時期に、同社のPRメロディーを耳にしたようだ。

なお、リンガーハットに餃子がある。初めて入店した日に餃子を食べたかどうかは思い出せない。




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